ホレンコの友 2023年12月号
「インマヌエル」
見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み、
その名をインマヌエルと呼ぶ(イザヤ書7章14節b)
日本キリスト教会:小樽シオン教会牧師 高田昌和
このイザヤ書7章14節のインマヌエル預言は、紀元前922年にイスラエルが南北に分裂した後、約200年経過して南イスラエルであるユダ王国に現れたアハズ王の時代に預言者イザヤが告げた神の御言葉です。「インマヌエル」とは「神は我々と共におられる」という意味で、ここでの預言は神の御子で救い主である主イエスの誕生を預言するものとしてキリスト教会では大切にされてきています。
しかし、この主イエスの誕生を預言する言葉が預言された時期、紀元前8世紀の南北イスラエルは、国力が衰退し、アッシリアという大国と、周辺諸国からの圧迫によって、大変困窮した時代を迎えていました。
イスラエルはダビデ王(紀元前1000年に王に即位)の治世の中で、歴史の中で最大の面積と国力を持つようになりました。しかし、有名なウリヤの妻バト・シェバにダビデが横恋慕し、夫であるウリヤを謀殺した頃からイスラエルの罪は深まり、ダビデの子ソロモンの時代になって、強制労働を行ったり、外国人の妻を多く入れて、妻達が偶像礼拝を持ち込み行っていたことをソロモンが黙認する、などのことがあり、その後国は荒れ、国は南北に分裂し、それぞれの国は衰退して行くことになりました。
南北王朝の時代の王の中には敬虔な王もあったのですが、それ以上に偶像崇拝や「主の目に悪とうつる」ことを行う王が多かったため、神の祝福が得られずに国力は衰退して行くのです。
そのような中で冒頭のインマヌエル預言がなされた時代、南王国のユダ王国の王アハズは神の前に善い王とはいえませんでした。そのアハズの時代北東にあったアラムという国が北イスラエルと同盟を結んでエルサレムに攻め上ってきました。それに恐れを抱くアハブ王でした。
しかしそこに神様は預言者イザヤを派遣してアハズ王に「恐れることはない」と伝えよと命じます。アハズ王は動揺して簡単にはイザヤを通しての神の言葉を受け入れませんでしたが、インマヌエル預言により子が生まれる前に、今エルサレムに攻め上っているアラムと北イスラエルは滅びるであろう、と預言するのです。
主イエスの誕生の時代、このような苦難を乗り越えた時代に生きる人々は、南北王朝時代の後にはバビロニアに翻弄され、その後大国に翻弄される時代を潜ってきた人々の子孫です。
今や、苦しみは神に覚えられ、そして、インマヌエル=神は我々と共におられる、そのために、おとめが身ごもっておところの子を産む。その存在が、人類を救済する神の御子で救い主であるイエス・キリストである、という物語に続くのです。
|